【シンヒナ】バッドエンドは船の上 中編
わたしは、ティトスからあと少しの命ということは聞いていた。そして、このベッドだけがある白い部屋から出たらわたしの中にいるルフが活動しなくなることも聞いていた。
つまりこの部屋を出ることは死を意味していた。
ティトスは残り少ない命のわたしに願いを叶えてくれると言ってくれた、大好きなシンに会いたいって言ってみたら、シンが来てくれた。
瞼が重くて、体を動かすことすら辛かったのに、シンが呼びかけてくれたら自然と目も開いて腕も伸ばすことができた。これはきっと愛の力だとわたしは信じた。
シンからなにをしたいか聞かれても、ここから出ることは叶わない、だって死んじゃうから。
だけど、もし叶うならば外に出たいと思っていたらぽろっと口に出してしまっていた。口に出した時は、外に出ることが怖くて怖くてたまらなかったけど、シンの目を見たらこの人の腕の中で息をすることを止めるのも悪くないなって思った。
***
シンはどうやら魔装してここまで飛んできたみたいで、帰りもそうするらしい。
「ヒナ、軽くなったな…」
わたしをおんぶして悲しそうに言うから頭を叩いた。
「重いって言われるよりかマシだよ」
「腕も細くなった」
「ここではそんなにご飯たべてないからね」
「シンドリアについたらまずはメシだな」
なんてたわいもない話をしてたら外に出るための窓に手をかけたシンの窓に映った目が一瞬合った。
「…ヒナ、怖いか?」
やっぱやめようか、なんて言うから覚悟を決めるしかない。シンの背中に顔を埋めて深呼吸をする、1回、2回、3回と。シンに多くない?って笑われたけどわたしはこれから死への旅に出るんだからこれぐらいは許してほしいわ。
「もう、大丈夫 シン行こう?」
そう言ったらシンは窓に手をかけて大空に向かって飛んだ。
***
生身の体で空を飛ぶと言う感覚は初めてで、強すぎる風はわたしの体を痛めつけていった。金属器のセーレの力を使おうと思ったけど、少ない命を散らすことを早めてしまいそうで、強風を耐えた。
無事にシンドリアについたのはお昼を過ぎたあたりで、市場は夕食の材料を求めている国民で賑わっていた。
おんぶを降ろしてくれて、久しぶりにシンドリアの地に足をつけた。なぜかそれだけで感動して涙が止まらなかった。
「ヒナ、おかえり」
そんなこといってシンは抱きしめるから余計に涙は止まらなくて、
「ただいまーーーーーー」
大きな声で返事をした。
***
あの後、大声を出したせいで市場にいた人達からの注目の的になってしまって、海岸に逃げてきた。シンはバレたくなかったようで若干拗ねてる。
「国民はヒナのこと大好きだから、あんな大声出したらヒナは俺だけをことをみてくれないだろ?」
ってもっと拗ねるからごめんねっていって抱きしめたはずだった。
いきなり体から力が抜けて、目の前が揺れ、心臓がバクバクを強く打ち付ける。突然起こった事態に脳がパニックを起こしてうまく息が吸えない。
「ヒナッ!!」
「シ…ン…!」
たすけてって言いたくて手を伸ばしたはずなのに、電源が切れたように視界が真っ暗になった。
ーー大いなるルフの流れよ
ーー最後に、あの人に伝えたいことを言わせて
ーーそれを言ったら全てあげる
ーーだから