雛鳥Café

思いついたネタとか小説とか置いておく倉庫

【兼相】とある夏の日。

日差しが照りじわじわ熱気が肌に伝わる暑い日、俺は顔に汗を伝わせながら今日の内番である畑仕事に精を出していた。

「あちぃ……」
「兼さんはたくさん着てるもんね」

 

俺の内番の服は着物の下にまた服を着ているため他の人より倍は暑いはずだ。隣でくすっと堀川国広が笑いながら畑を耕している。
今日の内番は新たな作物として粟田口の短刀組の意見でトウモロコシを植える作業をしている。他にもトマト、なす、枝豆を植えている。

 

「とっとと終わらせて本丸で涼もうぜ」
「うん、そうだね!今日は相楽ちゃんがとっておきの物を用意してるって言ってたし、楽しみだなぁ」

 

俺は本当か!?と目を輝かせ、せっせかと畑を耕しトウモロコシのタネを蒔く。

相楽こと蓮月相楽は今の主人で俺たちをツクモ神として顕現させている奴で少し気になっている奴だ、俺は相楽と過去に一緒の場所にいたことがあるがその時の相楽は女ではなく男だった。詳しいことは話せないが、とにかく俺は今の相楽に惚れている。
その相楽がなにやら褒美をもっているとなると張り切るしかないじゃないか。

 

「あとこれだけだな?」
「このトマトのタネを蒔いたら終わりだよ」
「よっしゃ、蒔くぞ」
「はいはーい」

トマトのタネをパラパラと俺が蒔いて国広が水をかけていく。そして最後のタネと水撒きが終わり、駆け足で本丸に向かう。

 

「相楽!内番終わったぞ!」

 

しかし、しーんと静まり返る玄関。いつもなら相楽が出迎えてくれるが今日に限って出てこない。…なにかあったのか?と焦る気持ちが強くなりつつ 部屋の襖を開けるがそこには相楽は居らず代わりに大倶利伽羅が居た。大倶利伽羅は察したのか溜め息をつきながら口を開いた。

 

「あいつなら部屋でへばってるぞ」
「!?」
「心配なら早く行け」

倶利伽羅が言ったことに驚きを隠せず、礼を言うのも忘れ相楽の部屋に向かう


「相楽!!!!!」
「うわっ、!?」
「ひゃ!!!!」

勢いよく襖を開け相楽の安否を確認するが部屋には相楽1人だけでなく燭台切と鶴丸さんがいた。

 

「つめた…っ」
「ご、ごめん!相楽ちゃん、冷たかったよね!?」
「はははははっこりゃ驚いたね」

 

どうやら布団で寝ている相楽を看病していたらしい、燭台切が冷やした布をかけようとした時に俺が勢いよく襖を開けてしまったらしい。

 

「和泉守くんびっくりしたよ…内番は終わったのかい?」
「あぁ、相楽から褒美があるってきいて急いで終わらせてきた」
「ははっ和泉守らしいな」
「で、なにがあったんだ?」

 

朝はピンピンしてた彼女が昼過ぎに布団で寝ているとなるとなにかあったに違いない、相楽は、鶴丸さんに助けを求めたが、鶴丸さん本人はケラケラ笑いながら畳を叩いて話にならず代わりに燭台切が説明し始めた。

 

「えーっとね、君たちが内番に行ってから相楽ちゃんが内番暑いだろうからかき氷作りたいって言い出したところまではよかったんだけどね、待ってたら暑さにやられて倒れちゃってこんな状態に…」
「うぅ…」

 

燭台切の説明で状態は理解した。元々相楽は暑いものが苦手でこういう日はよく体調を崩していた。今回も暑さが原因ということ、そして褒美はかき氷の事だったらしい。相楽はみっともないと思ったのかスルスルと布団に潜っていく

 

「和泉守くん来たことだし、相楽ちゃんのことは任せてもいいかな?これから僕たち用事があって」と言い残しそそくさと2人はでていってしまった。部屋には俺と相楽の2人だけ、俗に言う"ちゃんす"がきた。

 

「…ごめんね、兼さん こんな主みっともないよね」
「そんなことねーよ、暑さにやられるぐらい何度でもあるだろ …一緒にかき氷食ってゆっくり休め」

心臓がバクバク言ってるのが耳でわかるぐらい緊張している。 座った隣にかき氷機と氷の入った桶が丁度あり、湯のみを置き ガシャガシャと雑に回し出来立てのかき氷を相楽に渡す。相楽はポカーンとしたと思ったら吹き出して「シロップないじゃん〜」と笑う。

「もってくるか?」
「ううん、このままでいいよ 溶けちゃうし… いただきます」

 

ただの氷を砕いたものを口に運ぶ、冷たさが伝わったのか相楽が唸る。「つめたいー」といって匙を俺に向けてくる。

「ほんとは兼さんのご褒美なんだからわたしがあげる立場なんだから…ほら食べて」
「いいのか?」
「早く、溶けるから」

 

匙に乗った氷を食べる、体に冷たさが伝わり暑さが飛んだ。
「シロップなくてもいけるな」
「うん、いけるね」
「…あー、早く治せよ?俺が蒔いたトウモロコシ食べるだろ?」
「もちろん!」

 

相楽はニッと笑い布団に横になり眠りについた。
俺は眠る相楽の手を握り誰にも聞こえない声で"好き"と伝えた。


ーーー後日、相楽と間接で匙を使っていたところを鶴丸さんがみていて本丸が大騒ぎになったのは別の話。

 

 

 

【2015-06-13:by Privatter】